障害者差別解消法、大学の対応?合理的配慮?

障害者差別解消法とは?

正式名称は「障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律」と言い、平成28年4月1日に施行されました。
障害を理由とする差別の解消を推進する目的の法律となっており、障害者差別解消法の略称で呼ばれるのが一般的になっています。

障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律 - 内閣府

大学は何をすればいいの?

障害者差別解消法によって大学に求められるもののひとつが「合理的配慮」です。

障害者差別解消法に先だって国連で採択され、本国でも発効された「障害者の権利に関する条約」では、以下の条文があります。

第二十四条 教育
 締約国は、障害者が、差別なしに、かつ、他の者との平等を基礎として、一般的な高等教育、職業訓練、成人教育及び生涯学習を享受することができることを確保する。このため、締約国は、合理的配慮が障害者に提供されることを確保する。

障害者の権利に関する条約(略称:障害者権利条約)

「合理的配慮」って何?

では、この「合理的配慮」とはどんなものなのでしょうか。
「障害者の権利に関する条約」では以下の定義とされています。

「合理的配慮」とは、障害者が他の者との平等を基礎として全ての人権及び基本的自由を享有し、又は行使することを確保するための必要かつ適当な変更及び調整であって、特定の場合において必要とされるものであり、かつ、均衡を失した又は過度の負担を課さないものをいう。

また、平成23年に改正された「障害者基本法」にもこの「合理的配慮」の条文があります。

 (差別の禁止)
第四条 何人も、障害者に対して、障害を理由として、差別することその他の権利利益を侵害する行為をしてはならない。
 社会的障壁の除去は、それを必要としている障害者が現に存し、かつ、その実施に伴う負担が過重でないときは、それを怠ることによつて前項の規定に違反することとならないよう、その実施について必要かつ合理的な配慮がされなければならない。
障害者基本法:障害者施策 - 内閣府

「合理的配慮」=「社会的障壁の除去のための配慮」と解すことができそうです。

また、社会的障壁の除去は、
除去を必要としている者に対し行う
除去の実施負担が過重でない場合に限る
とも読めます。

社会的障壁って何?

では、この社会的障壁とはどういったものでしょうか?
これも、「障害者基本法」に定義があります。また、その対象とすべき障害者の定義もここに記されています。

 (定義)
第二条 この法律において、次の各号に掲げる用語の意義は、それぞれ当該各号に定めるところによる。
  障害者 身体障害、知的障害、精神障害(発達障害を含む。)その他の心身の機能の障害(以下「障害」と総称する。)がある者であつて、障害及び社会的障壁により継続的に日常生活又は社会生活に相当な制限を受ける状態にあるものをいう。
  社会的障壁 障害がある者にとつて日常生活又は社会生活を営む上で障壁となるような社会における事物、制度、慣行、観念その他一切のものをいう。
大学の場合は、「大学生活を営む上で障壁となるような事物、制度、慣行、観念その他一切のもの」となりそうです。

例えば、以下のようなものが考えられます。
・事物→介助等を認めない、階段しかない校舎
・制度→障害による受講拒否、受験拒否、入学拒否
・慣行→前例がない等の理由による断り
・観念→障害者に対する偏見等
これらの除去を大学は行う必要があると考えられます。

絶対義務?努力義務?

では、これを実施しないことによる罰則等はあるのでしょうか?
「障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律」では、下記条文があります。

第七条 
 行政機関等は、その事務又は事業を行うに当たり、障害者から現に社会的障壁の除去を必要としている旨の意思の表明があった場合において、その実施に伴う負担が過重でないときは、障害者の権利利益を侵害することとならないよう、当該障害者の性別、年齢及び障害の状態に応じて、社会的障壁の除去の実施について必要かつ合理的な配慮をしなければならない

第八条 
 事業者は、その事業を行うに当たり、障害者から現に社会的障壁の除去を必要としている旨の意思の表明があった場合において、その実施に伴う負担が過重でないときは、障害者の権利利益を侵害することとならないよう、当該障害者の性別、年齢及び障害の状態に応じて、社会的障壁の除去の実施について必要かつ合理的な配慮をするように努めなければならない
 行政機関等は絶対義務、事業者は努力義務となります。
国立大学等では遵守が絶対の義務で、学校法人である私立大学においては努力義務で良いと考えられます。

まとめ

ここまでの話をまとめますと、
大学は
除去を必要としている障害をもった学生に対し、
実施負担が過重でない範囲で、
大学生活を営む上で障壁となるような事物、制度、慣行、観念その他一切のものを除去する
義務がある。

ということになります。
障害については、個々人によってその内容も対応も様々です。同じ対応で良いといったことはほぼありません。

学生がどのような対応を望むか、大学としてどこまでの対応が可能か、当人としっかり対話をしたうえで検討していく必要があると思います。