大学の敷地・校舎面積は法律で決まってる?


校地・校舎の広さ

大学の敷地の広さや、校舎の広さは法によって定められています。

もし、「ウチの大学狭すぎる」といったことを思った方は、一度確認してみるのもよいでしょう。


1990年以前は、校地・校舎については詳細な基準がありましたが、現在では段階的な規制緩和により、その基準は多少緩やかなものになっています。


校地には何が必要?

大学設置基準には、以下の定めがあります。

(校地)
第三十四条 校地は、教育にふさわしい環境をもち、校舎の敷地には、学生が休息その他に利用するのに適当な空地を有するものとする。
2 前項の規定にかかわらず、大学は、法令の規定による制限その他のやむを得ない事由により所要の土地の取得を行うことが困難であるため前項に規定する空地を校舎の敷地に有することができないと認められる場合において、学生が休息その他に利用するため、適当な空地を有することにより得られる効用と同等以上の効用が得られる措置を当該大学が講じている場合に限り、空地を校舎の敷地に有しないことができる。
3 前項の措置は、次の各号に掲げる要件を満たす施設を校舎に備えることにより行うものとする。
一 できる限り開放的であつて、多くの学生が余裕をもつて休息、交流その他に利用できるものであること。
二 休息、交流その他に必要な設備が備えられていること。

なんと空地の定めまであるんですね。

もちろん、絶対必要ということではなく、同様の目的が果たせるものがあればいいようです。


また、運動場(グラウンド)についても、定めがあります。

(運動場)
第三十五条 運動場は、教育に支障のないよう、原則として校舎と同一の敷地内又はその隣接地に設けるものとし、やむを得ない場合には適当な位置にこれを設けるものとする。
2 前項の規定にかかわらず、大学は、法令の規定による制限その他のやむを得ない事由により所要の土地の取得を行うことが困難であるため前項に規定する運動場を設けることができないと認められる場合において、運動場を設けることにより得られる効用と同等以上の効用が得られる措置を当該大学が講じており、かつ、教育に支障がないと認められる場合に限り、運動場を設けないことができる。
3 前項の措置は、原則として体育館その他のスポーツ施設を校舎と同一の敷地内又はその隣接地に備えることにより行うものとする。ただし、やむを得ない特別の事情があるときは、当該大学以外の者が備える運動施設であつて次の各号に掲げる要件を満たすものを学生に利用させることにより行うことができるものとする。
一 様々な運動が可能で、多くの学生が余裕をもつて利用できること。
二 校舎から至近の位置に立地していること。
三 学生の利用に際し経済的負担の軽減が十分に図られているものであること。

運動場(またはその目的が果たせる場所)は絶対に設ける必要があり、できれば校舎の近くに設置すべき、ということのようです。


校地の広さは?

校地の広さ・面積については下記の定めがあります。

(校地の面積)
第三十七条 大学における校地の面積(附属病院以外の附属施設用地及び寄宿舎の面積を除く。)は、収容定員上の学生一人当たり十平方メートルとして算定した面積に附属病院建築面積を加えた面積とする。
2 前項の規定にかかわらず、同じ種類の昼間学部(昼間において授業を行う学部をいう。以下同じ。)及び夜間学部が近接した施設等を使用し、又は施設等を共用する場合の校地の面積は、当該昼間学部及び夜間学部における教育研究に支障のない面積とする。
3 昼夜開講制を実施する場合においては、これに係る収容定員、履修方法、施設の使用状況等を考慮して、教育に支障のない限度において、第一項に規定する面積を減ずることができる。

学生1人当たり10平方メートルで計算した面積が必要、ということになります。


校舎には何が必要?

校舎には、原則として下記の部屋を置く必要があります。

第三十六条 大学は、その組織及び規模に応じ、少なくとも次に掲げる専用の施設を備えた校舎を有するものとする。ただし、特別の事情があり、かつ、教育研究に支障がないと認められるときは、この限りでない。
一 学長室、会議室、事務室
二 研究室、教室(講義室、演習室、実験・実習室等とする。)
三 図書館、医務室、学生自習室、学生控室
2 研究室は、専任の教員に対しては必ず備えるものとする。
3 教室は、学科又は課程に応じ、必要な種類と数を備えるものとする。
4 校舎には、第一項に掲げる施設のほか、なるべく情報処理及び語学の学習のための施設を備えるものとする。
5 大学は、校舎のほか、原則として体育館を備えるとともに、なるべく体育館以外のスポーツ施設及び講堂並びに寄宿舎、課外活動施設その他の厚生補導に関する施設を備えるものとする。
6 夜間において授業を行う学部(以下「夜間学部」という。)を置く大学又は昼夜開講制を実施する大学にあつては、研究室、教室、図書館その他の施設の利用について、教育研究に支障のないようにするものとする。

専任教員には必ず研究室を備えなければいけません。

また、昼夜開講制の大学においては、その利用にも配慮をする必要があります。


校舎の面積は?

校舎の面積については、学部の種類に応じて定めが異なります。

ちょっと計算が複雑ですのでここでは割愛しますが、興味のある方は、第37条の2と別表から、計算してみてください。

(校舎の面積)
第三十七条の二 校舎の面積は、一個の学部のみを置く大学にあつては、別表第三イ又はロの表に定める面積(共同学科を置く場合にあつては、当該学部における共同学科以外の学科を一の学部とみなして同表を適用して得られる面積に第四十八条第一項の規定により得られる当該共同学科に係る面積を加えた面積)以上とし、複数の学部を置く大学にあつては、当該複数の学部のうち同表に定める面積(共同学科を置く学部については、当該学部における共同学科以外の学科を一の学部とみなして同表を適用して得られる面積)が最大である学部についての同表に定める面積(共同学科を置く学部については、当該学部における共同学科以外の学科を一の学部とみなして同表を適用して得られる面積)に当該学部以外の学部についてのそれぞれ別表第三ロ又はハの表に定める面積(共同学科を置く学部については、当該学部における共同学科以外の学科を一の学部とみなして同表を適用して得られる面積)を合計した面積を加えた面積(共同学科を置く場合にあつては、第四十八条第一項の規定により得られる当該学科に係る面積を加えた面積)以上とする。


校地・校舎面積に加えてはいけない場所

校地・校舎面積に含めてはいけない場所があり、以下のようなものが該当します。

・設置認可前の大学、短大、学部、学科のみで使用する土地・建物
・収益事業用の土地・建物
・海外に所有する土地・建物(国内校の一部として設置されたものは除く)
・利用計画のない土地(遊休地)・建物
・教職員専用の厚生施設、法人本部専用の事務棟の土地・建物
・プレハブ等の仮設的に設営する建物

法人のみが使用する事務室等は、ここに含めてはいけないので注意が必要です。


なお、意外だけど含めていいものの例としては下記のようなものがあります。
・学生寮
・スクールバスの車庫
・教員宿舎

校地・校舎に変更があった場合は?

増築や新規取得などで、校地・校舎に変更があった場合は、学校教育法施行規則第2条にもとづき、「校地・校舎変更届」を文部科学省に提出する必要があります。

第二条 私立の学校の設置者は、その設置する大学又は高等専門学校について次に掲げる事由があるときは、その旨を文部科学大臣に届け出なければならない。
一 目的、名称、位置又は学則(収容定員に係るものを除く。)を変更しようとするとき。
二 分校を設置し、又は廃止しようとするとき。
三 大学の学部、大学院の研究科、短期大学の学科その他の組織の位置を、我が国から外国に、外国から我が国に、又は一の外国から他の外国に変更するとき。
四 大学における通信教育に関する規程を変更しようとするとき。
五 経費の見積り及び維持方法を変更しようとするとき。
六 校地、校舎その他直接教育の用に供する土地及び建物に関する権利を取得し、若しくは処分しようとするとき、又は用途の変更、改築等によりこれらの土地及び建物の現状に重要な変更を加えようとするとき。

学校法人の届出・申請の手引:文部科学省


おわりに

当たり前のようにある校地や教室、研究室ですが、実はしっかりとした定めがあって、その広さが決まっていることがわかりました。


これらも、大学が大学として、その目的を果たしていくための必要な最低限のルールであるといえます。


しっかりと関係条文を見直してみると、自分の大学に足りないところなどが見えてくるかもしれません。