授業目的公衆送信補償金制度って何?〜オンライン授業の著作権〜

コロナウイルスの影響により、生活様式や暮らし方に変化を強いられていますね。
大学教育においても同様に、2020年度からオンラインによる授業が主流となっています。
もう10月となり、年度後期となりましたが、これまで通りの対面授業を実施できている大学も少ない状況です。

そんなオンライン授業の爆発的増加に伴い、2020年4月28日よりスタートしたのが「教育用著作物ネット配信円滑化制度」または「授業目的公衆送信補償金制度」です。

授業目的公衆送信補償金制度って何?

授業目的公衆送信補償金制度とは、簡単に言うと「授業目的で著作物をオンライン配布する場合の課金型加盟制度」であり、これに加盟し補償金を支払えば、著作者の許諾なしに授業目的で著作物をインターネット送信できるようになる制度となります。
外国の書籍等も含め、ほぼすべての著作物が対象となりますが、もちろん本を一冊丸々PDF化して配布するのはダメですし、問題集などをそのままなどはダメ、といった制約もあります。

授業目的公衆送信補償金制度は、2018年5月の法改正で創設された制度です。従来の著作権法では、学校等の教育機関における授業の過程で必要かつ適切な範囲で著作物等のコピー(複製)や遠隔合同授業における送信(公衆送信)を著作権者等の許諾を得ることなく、無償で行うことができました(いずれの場合も著作権者の利益を不当に害する利用は対象外です)。
2018年の法改正では、ICTを活用した教育での著作物利用の円滑化を図るため、これまで認められていた遠隔合同授業以外での公衆送信についても補償金を支払うことで無許諾で行うことが可能となりました。
具体的には、2020年4月28日の法施行後は学校等の教育機関の授業で、予習・復習用に教員が他人の著作物を用いて作成した教材を生徒の端末に送信したり、サーバーにアップロードしたりすることなど、ICTの活用により授業の過程で利用するために必要な公衆送信について、個別に著作権者等の許諾を得ることなく行うことができるようになります。

授業目的公衆送信補償金制度とは | 一般社団法人 授業目的公衆送信補償金等管理協会

授業目的公衆送信補償金制度は、2018年5月の法改正で創設された制度です。従来の著作権法では、学校等の教育機関における授業の過程で必要かつ適切な範囲で著作物等のコピー(複製)や遠隔合同授業における送信(公衆送信)を著作権者等の許諾を得ることなく、無償で行うことができました(いずれの場合も著作権者の利益を不当に害する利用は対象外です)。 ...


従来、対面授業においては、著作権法第35条第1項により、著作物の複製については教育機関においての(必要と認められる限度での)複製が認められていましたが、2018年の改正によりインターネット配信時にも一定程度の緩和策が追加された形になります。

著作権法
(学校その他の教育機関における複製等)
第三十五条 学校その他の教育機関(営利を目的として設置されているものを除く。)において教育を担任する者及び授業を受ける者は、その授業の過程における利用に供することを目的とする場合には、その必要と認められる限度において、公表された著作物を複製し、若しくは公衆送信(自動公衆送信の場合にあつては、送信可能化を含む。以下この条において同じ。)を行い、又は公表された著作物であつて公衆送信されるものを受信装置を用いて公に伝達することができる。ただし、当該著作物の種類及び用途並びに当該複製の部数及び当該複製、公衆送信又は伝達の態様に照らし著作権者の利益を不当に害することとなる場合は、この限りでない。
2 前項の規定により公衆送信を行う場合には、同項の教育機関を設置する者は、相当な額の補償金を著作権者に支払わなければならない。
3 前項の規定は、公表された著作物について、第一項の教育機関における授業の過程において、当該授業を直接受ける者に対して当該著作物をその原作品若しくは複製物を提供し、若しくは提示して利用する場合又は当該著作物を第三十八条第一項の規定により上演し、演奏し、上映し、若しくは口述して利用する場合において、当該授業が行われる場所以外の場所において当該授業を同時に受ける者に対して公衆送信を行うときには、適用しない。 

授業目的公衆送信補償金制度の早期施行について

今般の新型コロナウイルス感染症に伴う遠隔授業等のニーズに対応するため,平成30年の著作権法改正で創設された「授業目的公衆送信補償金制度」について,当初の予定を早め,令和2年4月28日から施行されました(令和2年4月10日に施行期日を定める政令を閣議決定しています)。 ...

補償金額はいくらなの?

補償金額は、年額で学生生徒ひとりあたり、以下のようになるようです。
ちなみに令和2年度だけは特別に0円でした。
小学校等:120円
中学校等:180円
高等学校等:420円
大学等:720円
この金額の妥当性については様々な意見があるかとは思いますが、教育業界に身を置く私としてはちょうど良いのではないか?と思うところです。
これ以上高ければ、「オンライン授業は完全にオリジナル・自前の制作物のみで行う」という判断も必要になるかもしれませんが、この金額で自由に従前のように授業が実施できるということであれば、とても有難いお話です。


大学・学校側では何をするの?

大学やその他教育機関においては、補償金の支払いのほか、補償金を著作権者に適切に分配するために、「どのような著作物を授業にてオンライン配信したか?」のリスト作成・報告の必要があります。

この報告の方法・頻度については現在も検討中とのことですが、教育機関側の負担軽減のため、5年に一度、8年に一度、10年に一度などの頻度での調査依頼をすることを考えているそうです。

頻度は数年に一度ではあっても、記録は残していく必要がありますので、「配信する可能性がある著作物においてはシラバス特定項目に記載する」ですとか、配信時報告フォームの用意などは必要かもしれませんね。

おわりに

この制度の創設目的にもあるように今後のWithコロナ、Postコロナ時代に即したオンライン教育の礎として、重要な役割があるものです。また、昨今のデジタル化・サブスク化の流れによって利益が得づらくなっている著作権者を守る制度にもなるかと思います。
学生・社会のために、本制度が活用されていくことを望みます。