QE(博士論文研究基礎力審査)って何?


QEとは?

QEとは、Qualifying Examinationの略称で、博士論文基礎力審査のことを指し、法的根拠としては、大学設置基準第16条の2に記載があります


 (博士課程の前期の課程の取扱い)
第十六条の二 第四条第四項の規定により修士課程として取り扱うものとする博士課程の前期の課程の修了の要件は、当該博士課程の目的を達成するために必要と認められる場合には、前条に規定する大学院の行う修士論文又は特定の課題についての研究の成果の審査及び試験に合格することに代えて、大学院が行う次に掲げる試験及び審査に合格することとすることができる。
一 専攻分野に関する高度の専門的知識及び能力並びに当該専攻分野に関連する分野の基礎的素養であつて当該前期の課程において修得し、又は涵養すべきものについての試験
二 博士論文に係る研究を主体的に遂行するために必要な能力であつて当該前期の課程において修得すべきものについての審査


また、学位規則の第3条第2項にも、記載があります。


(修士の学位授与の要件)
第三条 法第百四条第一項の規定による修士の学位の授与は、大学院を置く大学が、当該大学院の修士課程を修了した者に対し行うものとする。
2 前項の修士の学位の授与は、大学院設置基準(昭和四十九年文部省令第二十八号)第四条第三項の規定により前期及び後期の課程の区分を設けない博士課程に入学し、大学院設置基準第十六条及び第十六条の二に規定する修士課程の修了要件を満たした者に対しても行うことができる。

博士論文研究基礎力審査の導入について:文部科学省

条文上はこのような定めとなっていますが、実際どのようなものなのでしょうか。


QEの内容・目的は?

そもそもQE(Qualifying Examination・博士論文研究基礎力審査)は、平成23年1月の中央教育審議会「グローバル化社会の大学院教育」における提言を踏まえ、広く産学官の中核的人材としてグローバルに活躍できる高度な人材を養成するため、課程を通じて一貫したプログラムを持った体系的な博士課程教育を構築し、博士課程教育の質を高めることを目的とし、平成24年3月の大学院設置基準等の改正によって生まれた制度です。


この改正により、博士課程の目的を達成するために必要と認められる場合には、博士課程を通じて一貫した人材養成上の目的を有する学則に定める履修上の区分(コース、プログラム等)において、各大学の判断により、「博士論文研究基礎力審査」の合格を、修士論文又は特定課題の研究成果の審査と試験の合格に代えて、前期の課程を修了し修士の学位を授与する要件として課すことができるようになりました。


そもそも、博士の学位取得者が社会において十分な活躍をするに至っておらず、また、博士課程に入学しても将来の見通しが持てない、といった背景からきているものです。


優秀な人材は修士で就職してしまうといった制度面での問題が浮き彫りになったことから、修士と博士を切り離さない、一貫したプログラムを持った体系的な博士課程教育を構築し、博士課程教育の質を高めるといった目論見があります。


そのために、修士論文や特定課題研究の代わりにQE(博士論文研究基礎力審査)を設け、より国際性・実践性を備えた研究が可能になると考えられています。


確かに、博士までを見据えた方にとっては、修士論文を書くことがひとつの目標になってしまい、その後の博士課程との接続性の観点から言えば、足枷にもなりかねません。

一方で、論文作成のために特定分野に捉われることを回避でき、分野を超えた修士課程を経ることは、その後の博士後期課程においての独創性や新規性の観点からも期待が持てます。

試験の内容は?

試験の内容については、大学院によって様々ではありますが、筆記試験・口答試験などを行う大学院が多いようです。

また、1年次からも受験が可能な場合もあります。

終わりに

博士まで目指す方は、研究の道しかない、というのがこれまでの一般的な考え方となっていましたが、こうした制度の活用で、広く博士の取得者が社会で活躍できるようになるといいですね。