教育研究経費と管理経費?どう分かれる?


学校法人特有の支出分類

学校法人の支出には、「人件費支出」「教育研究経費支出」「管理経費支出」「借入金等利息支出」「借入金等返済支出」「施設関係支出」「設備関係支出」「資産運用支出」などがあります。


これらの項目は、学校法人の公表する財務諸表の「資金収支計算書」から確認することができます。

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これらの支出の中でも、学校法人特有の支出の分類が、「教育研究経費」と「管理経費」となります。


教育研究経費と管理経費に分ける理由は?

なぜ、同様の支出であっても、教育研究経費と管理経費に分類する必要があるのでしょうか?


これは、経常費補助金の助成対象が教育研究に使われる経費に限定されるため、教育研究経費と管理経費に区分する(教管区分とも呼ぶ)必要があるためです。


学校会計の歴史は、日本の公費助成との繋がりが深く、そうした流れが、この分類方法を会計基準として残しています。


教育研究経費と管理経費の分類方法・区分基準は?

広い意味合いで考えれば、学校法人が支出する経費はすべてが教育研究のためのものだと言えますが、昭和46年11月27日付文部省管理局長通知、雑管第118号により、教育研究経費と管理経費の区分基準が示され、現在もこれをもとに教管区分が行われています。

「教育研究経費と管理経費の区分について(報告)」について(通知)

この中では、以下のような経費が、管理経費として示されています。

1. 役員の行なう業務執行のために要する経費および評議員会のために要する経費
2. 総務・人事・財務・経理その他これに準ずる法人業務に要する経費
3. 教職員の福利厚生のための経費
4. 教育研究活動以外に使用する施設、設備の修繕、維持、保全に要する経費(減価償却贅を含む。)
5. 学生生徒等の募集のために要する経費
6. 補助活動事業のうち食堂、売店のために要する経費
7. 附属病院業務のうち教育研究業務以外の業務に要する経費


これら以外の経費については、主たる使途によって、教育研究経費と管理経費のいずれかに計上されたり、各学校法人で定めた合理的な配分基準によって按分されます。

例えば、光熱費などは、使用割合や教職員数・学生数、使用面積などを基準に按分されますし、減価償却額についても、同様に按分が必要となります。


よく迷う教育研究経費と管理経費の区分

学生募集関連経費

学生募集に関する経費(広告費、大学案内・願書等印刷費、旅費など)は上述の通り、管理経費の扱いとなりますが、入試実施自体に関する会場レンタル代や試験問題印刷費などは教育研究経費となります。

また、広告費であっても、いわゆる入試広報ではなく、大学広報としての教育研究に関する広告のみであれば、教育研究経費としての計上も可能なようです。

スクールバス等に関する経費

スクールバス等に関する経費は、基本的には管理経費となりますが、他にこれに代わる交通手段がなく、大多数の学生が利用するような場合には、教育研究経費として計上することも可能なようです。

ただし、この運行に係る財源や、実際の利用状況・利用割合など、扱いに注意を要する必要があります。

自己点検・自己評価、認証評価に係る経費

学校教育法第109条に以下の記載があります。

第百九条 大学は、その教育研究水準の向上に資するため、文部科学大臣の定めるところにより、当該大学の教育及び研究、組織及び運営並びに施設及び設備(次項において「教育研究等」という。)の状況について自ら点検及び評価を行い、その結果を公表するものとする。

 大学は、前項の措置に加え、当該大学の教育研究等の総合的な状況について、政令で定める期間ごとに、文部科学大臣の認証を受けた者(以下「認証評価機関」という。)による評価(以下「認証評価」という。)を受けるものとする。ただし、認証評価機関が存在しない場合その他特別の事由がある場合であつて、文部科学大臣の定める措置を講じているときは、この限りでない。

 専門職大学院を置く大学にあつては、前項に規定するもののほか、当該専門職大学院の設置の目的に照らし、当該専門職大学院の教育課程、教員組織その他教育研究活動の状況について、政令で定める期間ごとに、認証評価を受けるものとする。ただし、当該専門職大学院の課程に係る分野について認証評価を行う認証評価機関が存在しない場合その他特別の事由がある場合であつて、文部科学大臣の定める措置を講じているときは、この限りでない。

 前二項の認証評価は、大学からの求めにより、大学評価基準(前二項の認証評価を行うために認証評価機関が定める基準をいう。次条において同じ。)に従つて行うものとする。


「教育研究水準の向上に資するため」の記載の通り、これらの経費は教育研究経費として計上できます。

また、認証評価機関への報酬も、教育研究経費として計上可能です。


大学から教職員への研究費手当

大学から教職員に研究費を支給している場合、その使用の明細や領収書などの提出を求めていない定額研究費は、税法上は給与の扱いとなり、人件費の扱いとなります。

ただし、国税庁からの通達で、下記のようなものがあり、一部については人件費ではなく、経費としての計上が可能です。

1 個人研究費、特別研究費、研究雑費又は研究費補助等の名目で、教授等の地位又は資格等に応じ、年額又は月額により支給されるものについては、大学が当該教授等からその費途の明細を徴し、且つ、購入に係る物品がすべて大学に帰属するものである等、大学が直接支出すべきであったものを当該教授等を通じて支出したと認められるものを除き、当該教授等の給与所得とすること。

2 大学から与えられた研究題目又は当該教授等の選択による研究題目の研究のために必要な金額としてあらかじめ支給される研究奨励金のようなものについては、1に準じて取り扱うこと。

3 教授等がその研究の成果を自費出版しようとする場合に、大学から支給を受ける出版助成金等については、当該出版の実態に応じ、当該教授等の雑所得又は事業所得の収入金額とすること。

4 学術上の研究に特に成果を挙げた教授等又は教育実践上特に功績があった教授等を表彰するものとして大学から支給される表彰金等については、当該教授等の一時所得とすること。

大学の教授等が支給を受ける研究費等に対する所得税の取扱について|源泉所得税関係 個別通達目次|国税庁


上記の通達により、定額支給研究費であっても、「大学が当該教授等からその費途の明細を徴し、且つ、購入に係る物品がすべて大学に帰属するものである等、大学が直接支出すべきであったものを当該教授等を通じて支出したと認められる」場合においては、教育研究経費としての計上ができることとなります。


おわりに

学校会計を扱ううえで、切り離せない分類である教育研究経費と管理経費ですが、これらの区分について理解しておくことは、業務上においても「何が大学としての教育研究活動なのか」ということを念頭に置いた判断ができるようになるため、非常に重要なことかと思います。

大学の運営上のプロセスの理解を深めるにあたり、「お金の流れを掴む」というのも、一助になるのではないでしょうか。